沈んだマインドをリフレッシュするには、少し厳しさを感じるようなシャープなシャンパンが最適です。不安や不満、焦りといったネガティブな気分は、鋭い酸味が与える小さな痛みとともに吐き出してしまいましょう。低いドサージュや短めの熟成期間などの条件で厳選した、切れ味抜群のシャンパンをご紹介します。今宵のうちに気持ちをリセットして、スッキリとした頭で明日の課題に臨みましょう。
小さな「敗北」の夜にはシャンパンが必要だ
「シャンパンは、勝利の時には飲む価値があり、敗北の時には飲む必要がある」
—— ナポレオン・ボナパルト
様々な競争やストレスにさらされる現代人。日常の中には小さな敗北を感じる瞬間がたくさんあります。
仕事でミスをしてしまった。プライベートがなかなか思うようにいかない。将来の不安への対策を後回しにしてしまっている。漫然とした日々に焦りを感じている・・・。
そんなあなたに今必要なのはシャンパンです。ただ自分を甘やかすためではなく、沈んだマインドをシャキッと切り替えるためのものです。
心の痛みを吐き出させる「少しの痛み」
沈んだ気分をリフレッシュするためのシャンパンに必要なのは、少し厳しさを感じるようなシャープな酸味です。
程度の差こそあれ、鋭すぎる酸の刺激は、ある種の『厳しさ(小さな不快感)』を伴います。飲めば小さな痛みを感じます。その刺激こそ、あなたの心の中にある「我慢できる程度の痛み」を外に吐き出させる触媒となります。
漠然と感じていた後悔や不安・不満といったネガティブな感情。それと向き合った上で鮮烈な泡と酸味とともに飲み込み、今夜消化してしまいましょう。
あえて小さな痛みを伴う刺激で、心のモヤモヤを吐き出し、その夜で気分をリセットする。これこそワインを知り尽くした大人だからできる最高のセルフケアです。
これはある意味荒療治です。
もともとバイタリティを持って前向きに生きる人向けです。前に向けないほど傷ついた心には、「休日のリラックスタイムに」のシーンでおすすめする、やさしく包み込むようなシャンパンがおすすめです。
気分のリフレッシュに最適な条件とは
酸味の低いシャンパンなど存在しません。フランス最北の産地ゆえの冷涼な気候であること。糖度が低めな状態でブドウを早摘みすることが主な理由です。
その上でシャンパンにおける酸の感じ方はいろいろです。違いを生むその理由と、シャープな酸味を感じるシャンパンの条件は、主に次の4つです。
- マロラクティック発酵をさせない
- 少ないドサージュ
- シャルドネ主体のブレンド
- 長くない瓶内熟成期間
マロラクティック発酵をさせない
マロラクティック発酵とは、シャープな酸味を呈するリンゴ酸を、まろやかな酸味の乳酸に変える反応のことです。ブドウ果汁をアルコール発酵させた後、ワイン中のバクテリアにより自然と起こる場合もありますし、意図的に起こさせることもできます。冷却や亜硫酸添加などでブロックする選択肢もあります。マロラクティック発酵により微生物学的に安定するというメリットもあります。
シャープな酸味は敬遠される傾向にあります。それゆえシャンパンの多くは、全量/部分的にマロラクティック発酵をしてつくられます。一方であえてそのシャープな酸味を保つため、ブロックする生産者もいます。この緊張感のある酸味が、気分をリフレッシュしてくれる重要な要素です。
少ないドサージュ
シャンパンは出荷前に味わい調整の目的でリキュールを加えます。この糖分添加と出来上がる甘さを「ドサージュ」と呼びます。
「辛口」と呼べるドサージュ量でも、ワイン自体のふくよかさや甘みによって、酸味をまろやかに感じるものも多いです。「エクストラ・ブリュット」「ブリュット・ナチュール」などの低いドサージュ。そう表記されるシャンパンの方が、切れ味のいい酸味が五感を目覚めさせてくれます。
黒ブドウよりシャルドネ主体
どちらかというとピノ・ノワールやムニエ主体より、シャルドネ主体のシャンパンの方が、細身でかろやかな味わいの傾向があります。チョークのようなミネラル感があるものは、よりシャープで引き締まった印象を与えてくれるでしょう。
とはいえこれは「大まかには」という分類です。ピノ・ノワール主体でもシャープな味わいのシャンパンも存在します。
フレッシュ感のために熟成は短め
シャンパンは長い瓶内熟成を経て、複雑で豪華な風味を獲得します。代わりにフルーツや花のようなフレッシュな風味は控えめになります。
沈んだマインドをリフレッシュしたいとき、長期熟成による落ち着いた風味は必ずしも必要ありません。若々しいエネルギーを感じるような、あえて熟成期間が短いシャンパンを選ぶのがポイントです。
具体的な線引きは難しいものの、36か月以内なら短めと言っていいでしょう。他の条件によっては5年程度でもフレッシュな場合があります。
判別は難しいのですが、日本に輸入されてからの期間も短い方がベターです。回転の良さそうな売れているシャンパンを狙いましょう。
無理なく常備できる価格帯
気分が沈む機会はある日突然訪れるものです。その時になってシャンパンを選んで買おうとは、なかなかならないかもしれません。シャンパンが必要な夜に備えて、ワインセラーや冷蔵庫に常備しておくのが理想です。
そのためにはあまりに高価なものは不適でしょう。途中で味わいが分からなくなるほど深酒してしまっても問題ない。そんなデイリー〜ミドルレンジで選ぶのが最適なのです。
気分をリフレッシュするシャンパン
沈んでしまったメンタルをセルフケアするようなシャンパン。
ノン・マロラクティック発酵、低ドサージュ、シャルドネ主体、短い熟成期間をポイントとして、Epicurean Paletteのラインナップからおすすめのものを厳選しました。
凛とした媚びない雰囲気がいい!
揺れている心の状態だからこそ、ゆるぎない雰囲気のシャンパンに惹かれるのかもしれません。
コート・デ・ブランはシャルドネ主体の偉大なシャンパンが生まれる聖地。白亜質土壌に由来するであろう、凛としたミネラル感と、背筋が伸びるような引き締まった酸味を持ちます。所有畑わずか5.5haだからこそできる、「気に入る人だけ楽しんでくれたらいい」の媚びない姿勢を感じます。
このシャンパンのように強いマインドでありたい!そう思わせてくれます。
挑戦者のマインドに勇気をもらう
ル・メニル・シュル・オジェの特級畑シャルドネを中心につくられるこのシャンパン。エンクリのラインナップの中では短い、24か月という熟成によるフレッシュ感が最大の特徴です。
エンクリのオーナーはイタリア人。シャンパーニュ地方は、何世代にもわたってブドウを育ててきたような生産者が多い土地です。さぞ強い挑戦者のマインドを持っているのでしょう。
恵まれた栽培条件の畑、若いメゾンゆえの最新式の設備で、非常に洗練された味わいです。生産者もシャンパンも若々しいエネルギーに溢れています。
ノンドゼゆえにストレートに刺さる
こちらは全くドサージュを加えないブリュット・ナチュール。それでも味わいのバランスがとれているのは、3品種を1/3ずつブレンドしていることと、4年以上の熟成期間を経ているからです。
とりわけフレッシュということはありませんが、柑橘やアーモンドなどの風味をストレートに感じます。軽快で細身、混じりっ気のない味わいが、それと対照的なモヤモヤした心を洗い流してくれそうです。
ノンマロのシャープさが潔い
ゴッセはマロラクティック発酵を一貫して行わないことで有名な生産者です。リンゴ酸によるシャープな酸味により、高い熟成ポテンシャルがあります。それゆえスタンダードにあたるこの「グランド・レゼルヴ」でも、最低4年、平均5年の瓶内熟成がなされます。
マロラクティック発酵をしないので、5年熟成であってもゴッセの酸味は驚くほどフレッシュ。さらに熟成による旨味感を伴います。ピュアでシャープな風味は、心の曇り空を吹き飛ばしてくれそうな存在感があります。
味わいも造りもスマートに
ラルマンディエ・ベルニエは近年更に評価を高めている生産者。ビオディナミによる栽培、天然酵母による発酵という、近年注目を集める手法を採用。加えてビオディナミの調合剤散布にはドローンを使うなど、合理的でスマートなワイン造りをしています。
瓶内熟成は最低2年と短いものの、ベースワインの時点で1年の樽熟成をしています。熟成香はないものの、フレッシュ感はやや控えめ。2g/Lという絞られたドサージュによる軽快さと、シャルドネ100%によるスマートな味わいで、ごちゃごちゃになった頭の中もスッキリ整いそうです。
食事にあうワインをあえて単体で
シャルドネ主体のシャンパンが持つキュっと締まる酸味。それが料理の余韻を引き締め、ミネラル感が塩や出汁の旨みを引き立てます。食事時のワインとしても活躍する証拠が、サクラアワードの「天ぷらに合うワイン」賞でしょう。油ものの後であれば高い酸味も気になりません。
そのシャンパンをあえて単体で楽しみましょう。料理が欲しくなるようなバランス感こそが、沈んだ心を刺激する「少しの痛み」です。
気分をリフレッシュしたい日には、まずはこのシャンパンを料理なしで。それでリセットできたならば、翌日は食事と一緒に。油脂とあわさることで朗らかな表情になるシャンパンで、明るくやさしい気持ちになれるでしょう。
熟成感があってもなおシャープ
一般的には、白よりもふくよかで丸みがあるイメージの強いロゼ・シャンパン。しかしこちらは、その期待を心地よく裏切るシャープさを持っています。
ロゼでありながらブレンドの92%をシャルドネが占め、ボリューミーではなく凛とした細身な味わい。瓶内熟成を5年も行っていながら、驚くほど若々しいフレッシュ感を保ち続けているのは、マロラクティック発酵を一切行わないからこそです。
「ロゼはこうあるべき」という固定観念を軽やかに飛び越える1本。この鋭い切れ味を味わえば、日常のモヤモヤも晴れ、「周りの目や期待に振り回されなくてもいいかも」と心がフッと軽くなるはずです。
逃げではない、ポジティブなお酒を
嫌なこと、つらいことがあったとき、深酒をしてそれを一時忘れる。お酒にそんな側面があるのは確かですが、多くの問題はそれでは解決しません。「よし、やるぞ」とあなた自身が立ち向かわねばなりません。
そのために必要なのは心を奮い立たせるきっかけ。ただ美味しいだけじゃない、少しの痛みを持ってあなたを叱咤激励してくれるようなシャンパンです。それを集中して味わうころには心のモヤモヤはほぐれていき、翌日にはスッキリとした頭で今日の課題に取り組めることでしょう。






