感動的な美味しさを狙っているわけではなく、ただ相手の方にガッカリされなければいい。手堅いワイン選びのポイントは、有名生産者の中~上級シャンパンを選ぶことです。高級感が伝わりつつベタ過ぎないチョイスで、目新しさは無くとも満足してもらえるはず。好みの分からない相手のための、手堅いシャンパン選びとおすすめ銘柄をご紹介します。
失敗しない手堅いシャンパン選びとは
例えばこんなシチュエーションを想像してください。
- 取引先の重役さんがワイン好きで、レストランでの会食にシャンパンを1本持ち込むことになった
- 結婚前に相手の実家へ挨拶に。ワイン好きらしい両親のためにシャンパンを持参する
それが一緒に飲む場合でもプレゼントする場合でも、相手にあわせて選びたいですよね。でも先方の好みは分かりません。さてどのようなシャンパンを選びましょう。
誰もが美味しいというワインはない
ワインは嗜好品であり、身体にとって必ずしも必要な栄養素ではありません。だからでしょう。品質の優劣とはまた別の、個人個人の好みがあります。極端な話、口に合わない場合は、どれほど高価なワインであっても苦痛に感じてしまうことすらあります。
ただし今回のシチュエーションに沿って想定するなら、相手は長年のワイン好きで、いろいろな高級ワインも飲んでいると思われます。そうでないなら、あなたはシャンパン選びに悩んでいないでしょう。
日ごろからワインを飲んでいる人なら、「赤ワインをよく飲む」などの好みはあっても、どのタイプでも飲めないということはありません。その上で自分がよく選んで買うワインには傾向があるでしょう。その好みが分かれば、あとは予算に合わせて選べばOK。でも他人の好みなんて分からないことがほとんどです。
好みが分からない相手には大手メゾン
相手の好みは分からない。でもガッカリされるほど外したくない。それならば、小規模生産者のシャンパンではなく、大手の大規模生産者がつくるものを選ぶべきです。
なぜならば大手生産者ほど万人受けする味わいに仕上げるものだからです。
なにせその生産規模ゆえに1万本、2万本売れたところで話になりません。毎年数十万本、あるいは数百万本を、気候や文化も違う世界中の人に届けないといけないのです。しかも一度きりではなく何度も手に取ってもらってこそ、ブランドの成功と言えます。
そのためにまず「シャンパーニュらしい風味」と「尖った酸などがない嫌われにくい味」が絶対条件です。その中で生産者の個性、そのメゾンの味を表現します。
例えば好みの分かれるキリっとシャープな酸味、というような味わいは、小規模生産者のシャンパンの方が多く見つかります。
ベタすぎないための中級クラス
大手メゾンのシャンパンは味わいとして無難な一方で、どこでもいつでも売っているゆえに「ベタ過ぎてつまらない」と感じられる恐れがあります。
それを避けるために、スタンダードではなく中級品や限定品などを選びましょう。
相手がワイン好きであれば、きっとその中級品のこともご存知でしょう。飲んだこともあるかもしれません。だからこそ「あなたのためにちょっといいシャンパンを用意しました」というスタンスが伝わります。ビジネス関係では、言葉や文字に出さなくても金額が伝わるというのも大事ではないでしょうか。
しかもノンヴィンテージではなくミレジメ(生産年入り)であれば、「そういえばこのヴィンテージはまだ飲んでなかったな」と思ってもらえる可能性が高いです。数量が限られた特別モデルであればなおさらです。
上級クラスでももちろん構わないのですが、有名生産者の上級クラスはとてつもなく高価です。予算が合うならともかく、相手に気を使わせてしまうほど高価なものは、お互いにとって良くないでしょう。
ただし相手の方がシャンパン好きの場合、生産者の知名度をワンランク落とし、その分上級クラスを用意するという手もあります。
相手にシャンパンで驚いてもらう必要はないのです。ガッカリされず、誠意が伝わる。それが大事です。
言葉に出さずとも良さが伝わる
どんな生産者がどのような哲学や工夫でこのワインをつくっているか。そういったストーリーでより味わい深く感じることもあります。
友人・知人や家族などには、それを大いに披露してもらったらいいです。でもワインの経験値があなたより高いだろう相手に話すのは危険です。釈迦に説法になってしまうかもしれません。
聞かれたときに話せるよう、これがどんなシャンパンか把握しておくことは大事です。しかし理想は何も言わずともその価値が相手に伝わることです。だから大手のシャンパンを選ぶのです。
その価値が伝わるのは、大手がそれだけプロモーションにお金をかけているからです。広告などを駆使して直接消費者に認知を高めたり、ソムリエや業界関係者に向けたセミナーなどで勧めてもらえるようにしたり。そういった活動によりブランド価値を高めているのです。それらの費用はシャンパンの価格に含まれています。
こうした大手の有名銘柄より安くて美味しいシャンパンはきっとあるでしょう。しかし言葉に出さずとも、飲む前からであってもその価値が伝わるという点では、決して替えが利きません。
知名度があってベタすぎないおすすめシャンパン
この章ではEpicurean Paletteで取り扱う、有名な生産者の中級シャンパンを中心におすすめをご紹介します。
選び方の参考にしていただくべく、その生産者の知名度を、筆者の主観にもとづき次の3段階で評価しました。
- S 特にワインが好きでなくても知っている
- A ワイン好きならまず知っている
- B シャンパンをよく飲む人なら常識
ワイン好き度合いが控えめな方へは、知名度Sでより無難なものを。大変お詳しい方だと分かっているなら、ベタ過ぎない知名度Bのものをというふうに使い分けてください。
あわせてその生産者のラインナップの中での位置づけ、中級・上級・限定品などもご参考にどうぞ。
黄色いラベルはよく見かけるけれども、これを置いているお店は多くありません。ヴーヴ・クリコの最上級クラスです。特徴的なイエローのラベルは、ワインに詳しくない人であっても心当たりがあるはず。専用のボックスとあわせて高級感が伝わります。
映画『007』シリーズに登場するシャンパンとして有名なボランジェ。ピノ・ノワールに特に注力したボリューミーな味わいで、大手がつくるシャンパンの中でも特に飲みごたえがあるものとして知られます。その中でこの「PNTX20」は、その年と村の個性を表現する限定品。ボランジェはよくご存知でも、これに限れば未飲かもしれません。
たとえワインに詳しくない方でも、「サー・ウィンストン・チャーチル」の名前には反応するでしょう。
ポル・ロジェは、最大手に次ぐくらいの知名度でしょう。歴史ある家族経営の生産者が、長年愛飲した元英国首相へ捧げるものとしてつくり続けてきたトップキュヴェです。
ブルーノ・パイヤールは規模が大きい生産者として比較的若いワイナリーです。しかしその洗練された味わいには定評があり、昔からのワイン好きの方であれば、そこかしこで飲む機会があったでしょう。造っているシャンパンの種類はなかなか多く、目新しさがあります。
ゴッセはシャンパーニュ地方でも特に歴史の長い生産者の一つ。セレブリスの白とロゼは、その最高級シャンパンです。
ゴッセはその醸造法ゆえに、キレのあるシャープな酸味が特徴です。なので今回ご紹介しているものの中では、やや人を選びます。ロゼ・シャンパンのロマンチックな雰囲気などは期待せず、ワイン好きの方へ質実剛健なチョイスと思った方がいいでしょう。
ジャクソンは「キュヴェ7××」などの数字が入ったスタンダードクラスが有名です。上級は単一畑からつくるシャンパンであり、ある程度の知識と経験があってこそ楽しめるものです。お相手の方がシャンパン好きの場合に選ぶといいでしょう。
エグリ・ウーリエは小規模生産者の中ではトップクラスの知名度を誇ります。ただしその規模ゆえに積極的なプロモーションを行っているわけではないので、「シャンパン好きなら誰でも知っている」という程度でしょう。ピノ・ノワールが得意な生産者がシャルドネ主体でつくるという珍しさもあり、通の方には喜んでもらえるでしょう。
不安を無くしてもてなしに全集中を
大切な方に喜んで帰ってもらいたい。そういうシチュエーションにおいて、シャンパンはもてなしの一つでしかありません。他にも気を配るべきことはたくさんあります。
それゆえこの1本は、あなたの不安を少し取り除ければいい。今回ご紹介した、驚きはないけれど堅実に満足してもらえるシャンパンで、ひとまずワイン選びはOK。思考リソースを他のことに割いて、ビジネスや会食の成功につなげていただければ幸いです。






