食後に楽しむ映画や読書の時間には、ふくよかさと落ち着きを備えたシャンパンがよく似合います。料理がなくとも満足できる深い味わいで、静かな夜の没入感を高めてくれるでしょう。品種や製法からその条件を紐解き、おすすめのシャンパンを厳選しました。趣味とシャンパンの「好き」を重ねて、大人だけの贅沢なひと時を味わいましょう。
大人の深い夜に寄り添うシャンパンの条件とは
食事を終え、一日のタスクをすべて片付けた後の静かな夜。
リビングの照明を少し落として、気になっていた新作の映画をゆっくりと楽しんだり、お気に入りの小説の世界にどっぷり浸ったり……。そんな誰にも邪魔されない「自分の好き」を満喫する時間は、大人にとって最高のリフレッシュタイムです。
大人の深い夜に寄り添うのはどんな味?
控えめな照明のもと静かに満喫する大人な時間。そこに似合うのは、明るくフレッシュで軽快なシャンパンではありません。ふくよかさと落ち着きを備えた、噛みしめるようにゆっくりと味わいたいシャンパンが相応しいでしょう。料理抜きに単体で味わって満足度が高く、高価すぎない価格であることが理想的です。
そんなシャンパンの条件は次の通りです。
- ベースワインの樽熟成
- ピノ・ノワール主体
- 熟成による複雑な風味
樽がもたらすふくよかさ
シャンパンのもととなる白ワインを樽熟成することで、風味の複雑さが増し、ふくよかな味わいになります。
樽熟成といっても、シャルドネの樽熟成あり/なしとは少し違います。シャンパンのベースワインを樽熟成するとき、基本的には新樽は使いません。バニラやココナッツのような樽香をワインに付与する目的はないので、古い樽を使います。
樽材を通した緩やかな酸化により、クリーミーでなめらかな口当たりになります。明確なバニラ香はなくとも、ナッツやスパイスのような風味が現われることもあります。
こうしてフレッシュな風味は少し控え目になり、味わいが落ち着いたイメージになるのです。
ピノ・ノワール主体のボリューム感
シャルドネよりもピノ・ノワールやムニエ、特にピノ・ノワール主体のワインは、ボリューム感のあるリッチな味わいになりやすいです。
赤ワインに通じるしっかりとした骨格を持つ味わいです。時間をかけて飲むことで温度が上がってきても、味わいのバランスが崩れにくいのがメリットです。むしろより豊かな香りを楽しむことができるでしょう。
ピノ・ノワール100%である必要はありませんが、ブレンド比率が高い方が、より大人の深い夜に相応しい味わいと言えるでしょう。
瓶内熟成の長い隠れた銘品を
瓶内熟成の期間が長いと、酵母由来の複雑な風味を獲得するとともに、泡感が細かく、よく持続します。飲み始めの元気な泡は穏やかになりますが、飲み終わるまでしっかりと立ち上る持続性は魅力です。
出荷後の瓶熟成が長いシャンパンも魅力です。メイラード反応によりカラメルのような香ばしい風味とコクが生まれ、落ち着いた味わいとなります。
こういった特徴を持つワインは魅力的ですが、有名ワインから探すのはおすすめしません。自宅でおいそれと開けられない価格になってしまうことが多いからです。
聞いたことのない生産者だが、スペックから美味しさが期待出来て、価格もそう高くない。そんなシャンパンを狙うべきでしょう。
ノンヴィンテージを侮ることなかれ
シャンパンにおいて、通常はミレジメ(ヴィンテージ表記)の下に位置付けられるノンヴィンテージ。複数ヴィンテージのブレンドであることは、「大人の深い夜に」適したシャンパンにおいてはむしろメリットです。ワイナリーで数年間熟成させたリザーヴワインがブレンドされているからです。それが風味の複雑性と落ち着いた雰囲気を与えます。
ミレジメの方が熟成期間を判別しやすいのは確かですが、ノンヴィンテージならではの美味しさも忘れてはなりません。
近年はソレラシステムを使う生産者も増えてきました。ソレラシステムは、簡単にはうなぎ屋さんなどで使う「秘伝のタレ」をイメージしてください。使った分だけつぎ足しつぎ足しを行うので、レシピではつくれない深みのある味わいになります。
ワインの場合も同様で、時に十数年に渡るヴィンテージが複雑な割合でブレンドされます。ヴィンテージ差を少なくして品質を安定させるとともに複雑さをもたらす、シェリー酒で一般的な手法です。
長期の瓶内熟成とはまた別の、シャンパンの風味に複雑性をもたらす熟成方法です。
大人の深い夜に相応しいおすすめシャンパン
静かに物思いにふけるような上質な自宅時間。そんな大人な時間に寄り添う、上記の条件を備えたシャンパンを、Epicurean Paletteのラインナップから厳選しました。
一口ごとに噛みしめたい、多層的なふくよかさ
このシャンパンには様々な手法が詰まっています。
ベースワインを樽発酵・樽熟成するだけでなく、1999年から続くソレラ式のリザーヴワインをブレンド。更に長期間の瓶内熟成。それらすべてが多様な風味をシャンパンにもたらしています。その複雑さ、ふくよかさゆえに、シャンパン単体であっても非常に満足度が高い1本です。しなやかな果実感が適度な落ち着きを与え、一口一口噛みしめたくなるでしょう。
異なる時間の見事な融合
ソレラで熟成したベースワインからつくるこのシャンパン。マロラクティック発酵はせずドサージュは少ないのに、十分にふくよかな風味が広がります。
若いワインだけでは出せないナッツやブリオッシュのような香ばしい風味。熟成ワインだけでは出せないみずみずしいフルーツ感。それらが混ざり合った、奥行きのある風味が楽しめます。
中心地をあえて避ける賢い選択
コート・デ・バール地区はシャンパーニュ地方の南東側。シャンパンの中心地であるランスから130~150kmも離れています。むしろブルゴーニュのシャブリ地区の方が近いほど。土壌も性質が異なります。それもあってかリーズナブルなシャンパンも多くつくられます。
もちろんただ安いだけでなく、ピノ・ノワールのしっかり凝縮したフルーツ感があります。シャンパンだけでゆっくり飲んでも物足りなさがない、まろやかな味わいが魅力です。
特級畑がもたらす圧倒的な余韻
ピノ・ノワールの生産で有名なグランクリュの村「ヴェルズネイ」に根差す生産者、ルソー・バトー。こちらは本拠地のブドウのみからつくられる、ピノ・ノワール100%のシャンパンです。
「Grand Cru」の格付けは伊達ではなく、フレッシュながらしっかり凝縮感のある風味が広がります。特に余韻の長さが秀逸で、一口飲みこんだらしばらく口を開きたくない。豊かな余韻を最大限楽しむには、夕食時よりその後がピッタリです。
赤ワインがもたらすボリューム感
ロゼ・シャンパンの製法にはセニエとブレンドがあり、こちらは後者の赤ワインをブレンドするタイプ。その15%の赤ワインはオーク樽で1年間熟成されています。
その赤ワインがベリー系の風味とともに、包み込むような豊かなボリューム感をもたらしています。赤ワイン由来の渋味は感じず、まろやかでジューシー。相対的に酸味は控えめに感じるでしょう。
ずっと口に含んでいたくなるようなまろやかさを持っています。
時間をかけて解き明かしたい香りの深淵
48か月というなかなかの熟成期間に加え、ソレラで10年熟成されたリザーヴワインを10%ブレンドしてつくられます。リンゴやベリーのようなアロマに加え、熟成に由来する様々な香りが立ち上ります。その複雑さは、一度鼻を近づけただけではとらえきれないほど。
食事時のワインは、最初は香りにも注目するものの、途中からは味が主体になります。唇を介してグラスに料理の匂いが移り、香りが混ざるのも理由です。時間とともにいろいろな香りを感じるこのシャンパンにはもったいないかも。食後のゆったり時間にこそ相応しいでしょう。
特別な夜のためのとっておき
エチケットに大きく描かれる「RSRV」の文字はリザーヴの意味。名門生産者であるマムにおいては、親しい人やVIPのためだけに貯蔵しているとっておきのシャンパンであることを示します。
2013年ヴィンテージで瓶内熟成が72か月以上なので、ある程度出荷後にも熟成していると予想できます。フルーツの香りとともにブリオッシュのような甘い香りも発達してきていて、静かな夜にピッタリの落ち着いた高級感があります。
大人なシャンパンをもっと楽しむコツ
ピノ・ノワールやムニエ主体の上質なシャンパンを最大限楽しむには、いくつかのポイントがあります。ワイングラスと温度です。
ピノ・ノワールと思ってグラスを選ぶ
シャンパンにおいてもワイングラス選びは大切です。
シャンパンならではの豊かな香りを大いに楽しむには、フルートグラスよりも白ワイングラスが向いています。
さらに今回ご紹介したような黒ブドウ主体のシャンパンにおいては、ブルゴーニュグラスが適していることもあります。あまりボウルの高さは必要ないので、シャルドネグラスがいいこともあります。ピノ・ノワールが主体なことに加え、様々な熟成により複雑な香りを持つので、それを十分に蓄える容量があった方がいいのです。
開けたては白ワイングラスで香りとともに泡感を楽しむ。時間が経って泡が抜けてきたときは、より風味豊かに楽しめるブルゴーニュグラスに切り替える。そうすれば1本のシャンパンで2つ3つの表情を楽しめます。
温度で香りの変化を楽しむ
基本としてシャンパンは冷やして楽しむもの。ワインクーラーに氷水を入れ、冷えた状態を保つ味わい方もあります。一方で12~15℃くらいの高い温度で現れる香りもあるので、温度が上がるに任せるという手もあります。
温度を上げて楽しむのは、特にベースワインを樽熟成していて、低ドサージュのタイプにおすすめです。温度が上がっても甘味を強く感じることはないので、最後までバランスよく「風味豊かな白ワイン」を楽しめます。
日常の中に「好き」の詰まった時間を
「好き」なことをしながら「好き」なシャンパンを飲む。それは大人にしかできない贅沢な時間です。
年齢を重ねるにつれ、若いころのように無我夢中にのめり込むことは少なくなるでしょう。その代わりに、一歩引いて自分のペースで、自分の「好き」を選ぶ余裕があるのでは。
映画や読書に美味しいシャンパンをあわせて楽しむ時間は、大人だけの特権です。お金と時間に余裕がなければ楽しめません。
若いころの没頭とは違う、一歩引いて楽しむ「好き」の時間。それにふくよかさと落ち着きを持った味わいのシャンパンで「好き」を重ねてみませんか?






