生産者形態による
シャンパンの選び方
「NM」「RM」などの生産者形態の分類は、シャンパン選びの指標の一つとなります。ブドウの調達法や生産規模の違いなどは、シャンパンの味わいに傾向として現れるからです。このページでは主要な3つの生産形態が持つ味わいに傾向と、それぞれが引き立つ最適なシーンをご紹介します。たくさんのシャンパンから1本を選び抜くプロセスが、よりスムーズで正確なものとなるでしょう。
シャンパンの生産者形態3分類
シャンパンには必ず、その生産者がどんな形態なのかが、認可番号とともに記載されています。よく見かけるものはつぎの通りです。
| 略称 | 正式名称 | 特徴・ブドウの調達方法 | 生産規模 |
|---|---|---|---|
| NM | ネゴシアン・マニピュラン | 自社畑のブドウに加え、栽培農家から購入したブドウでつくる。 | 大規模化しやすい |
| RM | レコルタン・マニピュラン | 自社畑のブドウのみからつくるドメーヌスタイル。 | ほとんどが小規模 |
| RC | レコルタン・コーペラトゥール | 自社畑のブドウを使うが、醸造は協同組合に委託し、自身のラベルで販売する。 | ほとんどが小規模 |
| CM | コーペラティヴ・マニピュラン | 生産者協同組合のこと。組合員のブドウから組合のブランドのシャンパンをつくる。 | 中~大規模 |
※表は左右にスクロールできます
エピキュリアン・パレットでは、RMとRCは性質が似ているものとしてまとめており、主にこの3つの分類でご紹介しています。
NMの特徴と適したシーン
市場に流通しているシャンパンで、最も多いのはNM(ネゴシアン・マニピュラン)がつくるものです。その性質上、生産規模を拡大しやすいからです。その規模感ゆえに、NMの生産者は「メゾン」と呼ばれることもあります。
知名度の高いシャンパン。モエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、クリュッグ・・・。全てNMです。生産規模の大きさが、彼らがつくるシャンパンの傾向と深く関係しています。
NMの味わいの傾向
シャンパーニュ地方には、モンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランといった生産地区があります。その中にはいくつもの村があり、それぞれ土壌や気候条件が微妙に違い、出来上がるブドウの性質もまた異なります。
しかし大規模なNMは、様々な地区のブドウをブレンドします。なので地区ごとの個性は平均化され、「シャンパーニュ地方全体の個性」が表現されます。
その生産規模は膨大なもので、年間生産量が100万本を超える銘柄も多くあります。それを毎年売り切るためには、一部のワインマニアが喜ぶ味ではいけません。ワインが好きな人もたまにしか飲まない人に喜んでもらえる味。そして買い続けてもらえる味が求められます。
味の安定性も重要です。その規模ゆえに多くのリザーヴワイン、最新のヴィンテージ以前の原酒を貯蓄しておく余裕があります。それを匠の技でブレンドすることで、年ごとの作柄にあまり左右されない、いつもの美味しさを提供できます。
NMがつくるシャンパンは、「万人受けする味」かつ「メゾンの個性を感じられる味」が安定的に供給される。そういった傾向があります。
プロモーションゆえの知名度
NMは生産規模の割にシャンパンの種類は少ない傾向です。それはプロモーション効率を最大化するためです。
ワインに関する広告で目にすることが多いのは、有名シャンパンのものではないでしょうか。シャンパンは決して安い飲み物ではありません。消費国で様々なプロモーションを展開し、多くの消費者に認知してもらい、安心して手に取ってもらうため。シャンパンを飲む時間をラグジュアリーなものと感じてもらうため。そのブランド価値向上をシャンパンメゾン自身が取り組んでいるのです。
生産する種類が多ければ、それだけいろいろなプロモーションが必要になりますし、消費者も迷ってしまいます。膨大な数を販売するため、分かりやすく覚えやすいものに厳選しているのです。
NMのシャンパンを選ぶべきシーン:おもてなしと確実性
失敗したくないとき、選んで安心なのはNMがつくるシャンパンです。
例えばパーティーシーン。たくさんのゲストの好みを把握するのは不可能。そんなときには飛びぬけた美味しさより、誰もが不満のない味が重要。万人受けする味を目指してつくるNMのシャンパンがピッタリです。知名度とともにだいたいの価格も知られているので、豪華さがきちんと伝わるのもポイントです。
同様の理由で贈り物として選ぶ際も安心です。特に相手の方がそれほどワイン通でない場合は無難なチョイス。一方で愛好家相手に贈るには「ありきたり」と思われてしまう恐れもありますので、次の章でご紹介するRMがつくるシャンパンがおすすめです。
おすすめのNMがつくるシャンパン
エピキュリアン・パレットで数多く取り扱うNMのシャンパンの中から、ピックアップしてご紹介したいのが「ガルデ」です。
ガルデは1895年に創業。130年以上の歴史を持ちます。シャンパンのラインナップは多く、1万円以下のリーズナブルなものから、長期熟成を経た高級品まで。ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、ロゼと様々につくり分けられるのも、歴史の長いNMならではのブドウ調達力ゆえです。
まずはこの1本から▼
ガルデブリュット トラディション
「トラディション」の名の通り、まずはこのシャンパンから飲んで生産者の腕前を知ってほしいという意図を持つ、ガルデの名刺代わりとなる 1本。突出したところのないバランス感が肝で、どんなシーンでも使える安心感があります。
RM、RCの特徴と適したシーン
自社畑のブドウからシャンパンをつくるRM(レコルタン・マニピュラン)。醸造だけを協同組合に委託するRC(レコルタン・コーペラトゥール)。その特徴はNMと対称的であり、一番の要因は生産量の少なさです。
RM、RCの味わいの特徴
もっとも味わいの振れ幅が大きいのが、RM、RCの特徴です。シャープな酸味が特徴的だったり、個性的な風味を持っていたり、樽熟成の効果がよく表れていたり・・・。そんな個性的なシャンパンが多く見つかるのがこの生産形態です。
それが可能なのは生産量が少ないからです。数千本から、少ないものは数百本という単位。万人受けを狙う必要がなく、世界のどこかにいる「一部の熱狂的な愛好家」の心に深く刺されば、それだけで十分に完売してしまうからです。
逆に小規模ゆえに、プロモーションにお金や時間をかけることはあまりできません。愛好家が口コミしたくなるような、高品質なシャンパンをつくる。それが最大のプロモーション活動です。
畑の個性を表現する
RMやRCの中には、単一畑・単一区画でシャンパンをつくる生産者もいます。それは先祖から受け継いできた畑を知り尽くし、それを大事にするからこそでしょう。まるでブルゴーニュワインのように、畑のテロワールをシャンパンで表現するのです。
資金回転率の問題で、RMはNMほど長い瓶内熟成期間を設けるのは難しいことが多いです。一方でそれをあえて短くリリースすることで、酵母由来の香りを抑えて畑の個性を強調する生産者もいます。
RM、RCのシャンパンを選ぶべきシーン
その風味の個性と生産量の少なさから、美味しさが広く知られてしまったRM、RCのシャンパンはすぐに入手困難なレアワインとなります。なかなか飲めないシャンパンだからこそ、ワイン好きばかりが集まる場に持参すればとても喜ばれるでしょう。日本に輸入されてまもないRMのシャンパンなどは、目の肥えた愛好家でも知らないことが多いです。レアな銘柄でなくとも、「これ、最近見つけてね。結構いいんだよ!」と紹介するのもいいでしょう。小規模なワイン会が向いています。
テロワールを表現したシャンパンは、飲み比べがなにより楽しい!同じ生産者のシャンパンを2本3本と並べることで、単なる美味しさに留まらないワインの楽しみが、あなたの知的欲求を満たすでしょう。
おすすめRM、RCがつくるシャンパン
エピキュリアン・パレットで数多く取り扱うRM、RCのシャンパンの中から、ピックアップしてご紹介したいのが「ドーヴェルニュ」です。
ドーヴェルニュはモンターニュ・ド・ランスのブジー村を中心に畑を所有。わずか5.3haと小規模ながら、すべてがグラン・クリュ格付けです。設備を持たないため発酵のみ委託。ほとんどRMに近い造り方をしているRCです。ブジーのピノ・ノワールは力強く丸みを帯びた味わいなのが特徴。そこにシャルドネでエレガンスを加えた、土地の特性をよく表現するシャンパンを造ります。
まずはこの1本から▼
ドーヴェルニュオーレリアン トラディション グラン クリュ ブリュット
スタンダードクラスでありながら「Grand Cru」の表記は、ブドウの質が高い保証。それは余韻の長さに感じられます。ブジーらしいふくよかさがしっかり感じられる、穏やかな味わいです。
CMの特徴と適したシーン
ブドウ栽培農家がいくつも集まってつくる「生産者協同組合」の形態が、CM(コーペラティヴ・マニピュラン)です。比較的生産規模は大きく、例えばニコラ・フィアット社などはシャンパーニュ有数の生産規模を誇ります。醸造や流通の点でスケールメリットを活かせるため、比較的リーズナブルなシャンパンが多いのが特徴です。
CMの味わいの傾向
CMのシャンパンを選ぶ際は、その生産規模に注目しましょう。ボトルの年産本数が明記されていることは稀ですが、「〇軒の農家が加盟しています」というのは公開されていることが多いです。
加盟農家が多く規模の大きな組合の味わいは、傾向として大手の「NM」に近くなります。突出した尖った個性こそ少ないものの、クオリティのブレが小さく、誰もが美味しいと感じるバランスの良い味わいを少し手頃な価格で楽しめます。
生産規模が小さなところは、RMに近い性質を持ちます。近隣の農家が集まりブドウを持ち寄るので、その地域の性質が反映されるのです。土地の個性を味わえるシャンパンをRMより少し手頃に楽しめるのが魅力です。
CMのシャンパンを選ぶべきシーン
CMのシャンパンはぜひ、自分へのご褒美として選んでください。
「ほとんどグラン・クリュのブドウを使っているのに割と手頃」「ミレジメで熟成期間が長いのに安い」そんなお値打ち感のあるシャンパンが多いのが特徴です。一方でNMほど上手にマーケティングしている会社は少なく、知名度としてはRMとさほど変わりません。そのため、大勢が集まる華やかなパーティーでブランド力を誇示するようなシーンには不向きでしょう。
ショップの商品の紹介をじっくり読み込んで、期待を込めて購入する。仕事の節目や何かの記念日を、そんな知的な大人の時間にこそ、最高の満足感を与えてくれます。
おすすめのCMがつくるシャンパン
エピキュリアン・パレットで数多く取り扱うCMのシャンパンの中から、ピックアップしてご紹介したいのが「パルメ」です。
パルメは現在モンターニュ・ド・ランスに415haの畑を所有。他の地域にも畑がありますが、味わいの中核をなすのはこの地域のグラン・クリュおよびプルミエ・クリュのブドウ。硬く厳しい味わいになりがちなテロワールですが、長期の瓶内熟成によって、メリハリがありながら親しみやすい味わいに仕上げています。
まずはこの1本から▼
パルメラ レゼルヴ
スタンダードクラスでありながら、モンターニュ・ド・ランスの特徴をしっかりと反映する鮮烈な味わい。4年以上の瓶内熟成によるクリーミーな泡感が楽しめます。「スタンダードでこれなら、上級はもっと・・・」と期待が膨らみます。
シャンパン選びの1つの指標に
このページではシャンパンの生産者形態による味わいの傾向と、それぞれに適したシーンをご紹介しました。
もちろんシャンパンの味わいは、これだけでは決まりません。ブドウ品種や生産地区、ベースワインの熟成方法、熟成期間、ドサージュなど、様々な要素が複雑に絡み合います。ご紹介した特徴に合わないシャンパンもあることでしょう。
それでも、生産者形態で判断するメリットは、必ずボトルのどこかに書いてあることです。シャンパンを選ぶ際のおおまかな指標の一つとして、生産者形態の分類を気にしてみてはいかがでしょうか。

